2024年度 調剤報酬 改定をわかりやすく解説!
2024年度の 調剤報酬 改定、あなたはどれほど知っていますか?
ニュースで耳にしたことはあるけれど、具体的な内容はよくわからない、という方も多いのではないでしょうか?
実はこの改定、私たち患者にも大きな影響を与えうるのです。
薬の値段は変わるのか?薬局のサービスはどうなるのか?薬剤師さんの働き方は?気になる疑問を解消し、より良い医療サービスを受けるためのヒントを見つけましょう。
この記事では、2024年度調剤報酬改定の基礎知識から、患者への影響まで、わかりやすく解説していきます。
2024年度 調剤報酬 改定の基礎知識
「調剤報酬改定」って、ニュースなどで聞いたことはあっても、実際どんなものかよくわからない方も多いのではないでしょうか? 今回は、2024年度の調剤報酬改定について、基礎知識からわかりやすく解説していきます。
調剤報酬の概要とその重要性
現役薬剤師の皆様にとっては常識かもしれませんが、調剤報酬とは、皆さんが病院で処方箋をもらって薬をもらう時、薬局さんが医療保険制度に基づいて行う仕事に対して支払われる報酬のことです。薬剤師さんが薬の量や飲み方を丁寧に説明してくれたり、飲み合わせをチェックしてくれたりするのも、この調剤報酬によってまかなわれています。
調剤報酬は、2年に1度見直しが行われます。なぜ見直しがされるかというと、医療を取り巻く環境の変化に対応するためです。高齢化の進展に伴い、多くの薬を服用する高齢者が増えています。また、それに伴い、複数の医療機関を受診する患者さんも増加しており、薬の重複投与や相互作用のリスクが高まっています。このような状況下では、薬剤師がこれまで以上に、患者さんの服薬状況を把握し、適切な服薬指導を行う必要性が高まっています。2024年度の調剤報酬改定では、このような状況を踏まえ、特に「地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するための体制評価の見直し」「質の高い在宅業務の推進」「かかりつけ機能を発揮して患者に最適な薬学的管理を行うための薬局・薬剤師業務の評価の見直し」といった点がポイントとして挙げられています。
主な改定スケジュールと実施日
2024年度の調剤報酬改定は、当初4月1日実施予定でしたが、準備期間の不足などを考慮し、2ヶ月後ろ倒しになり、6月1日から実施されることになりました。
今回の改定スケジュールは、以下のようになっています。
月 | 内容 |
3月 | 関係告示、点数表の告知 |
6月 | 調剤報酬改定の実施 |
つまり、3月には具体的な改定内容が発表され、薬局はその内容に基づいて準備を進め、6月1日から新しい調剤報酬体系がスタートする、という流れになります。
調剤報酬改定が薬局に与える影響
調剤報酬改定は、薬局の経営に大きな影響を与えます。例えば、薬局の収入源となる調剤報酬の点数が変更されると、薬局の収入が増減したり、新しい業務に対応するために設備投資が必要になったりする場合があります。
2024年度の調剤報酬改定では、特に「地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するための体制評価の見直し」「質の高い在宅業務の推進」「かかりつけ機能を発揮して患者に最適な薬学的管理を行うための薬局・薬剤師業務の評価の見直し」といった点がポイントとして挙げられています。
これらのポイントは、薬局に対して、より地域医療に貢献していくこと、患者さん一人ひとりに寄り添ったきめ細やかなサービスを提供していくことを求めていると言えます。薬局の経営努力によって、質の高い薬物療法が提供され、医療費の抑制にもつながることが期待されています。
2024年度調剤報酬改定の具体的変更点
2024年度の調剤報酬改定では、薬局の経営を安定させ、薬剤師さんの働きがいを向上させるための変更がいくつか行われました。患者さんにとっては、薬局でより質の高いサービスを受けやすくなることが期待されています。
例えば、アメリカでは、新薬の開発には莫大な費用と時間がかかります。製薬会社は、新薬を開発するために巨額の投資を行っており、その投資を回収するためには、必然的に薬価が高くなってしまうのです。一方、日本では、国民皆保険制度という世界に誇る医療制度があります。国民皆保険制度では、病気や怪我をした時に、誰でも必要な医療を、負担可能な費用で受けることができます。そのため、日本は世界的に見て、薬価が低く抑えられています。
調剤基本料の引き上げとその背景
調剤基本料とは、薬局が処方箋に基づいて薬を調剤し、患者さんに薬を提供する際の基本的な料金のことです。2024年度の改定では、この調剤基本料が引き上げられました。
例えば、調剤基本料1は42点から45点に、調剤基本料2は26点から29点に、それぞれ3点ずつ引き上げられました。これは、薬局の経営を安定させ、薬剤師さんの賃金を向上させることで、より質の高い薬局サービスを提供できるようにすることを目的としています。
医療現場では、医師と薬剤師は車の両輪のようなもので、お互いに協力し合うことで、患者さんに最適な医療を提供しています。医師は、患者さんの病気の状態を診察し、診断に基づいて薬を処方します。薬剤師は、処方された薬が本当に患者さんにとって適切かどうかを最終確認し、患者さんに薬の効果や副作用、飲み合わせなどを丁寧に説明します。
今回の調剤基本料の引き上げは、薬剤師の専門性をより一層発揮できる環境を整備し、患者さん一人ひとりに寄り添ったきめ細やかな服薬指導を提供できるようにするために重要な一歩となるでしょう。
新設された加算項目の詳細
2024年度の調剤報酬改定では、薬局がより質の高いサービスを提供した場合に加算される項目がいくつか新設されました。例えば、患者さんが自宅で安心して薬を服用できるように、薬剤師さんが患者さんの自宅に訪問して服薬指導などを行う「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」の夜間訪問加算、休日訪問加算、深夜訪問加算などが新設されました。
高齢化社会が進むにつれて、医療の現場では、病院から在宅へと治療の場が移行しつつあります。在宅医療は、患者さんが住み慣れた環境で、安心して治療を受けられるというメリットがある一方、医療従事者にとっては、病院とは異なる難しさがあります。
例えば、病院では、医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、多くの医療従事者がチームで連携して患者さんを診ています。しかし、在宅医療では、患者さんの自宅を訪問するのは、医師や看護師、薬剤師など、限られた人数の医療従事者になります。
そのため、在宅医療では、医療従事者一人ひとりの負担が大きくなり、特に、緊急時の対応は大きな課題となっていました。今回の改定で新設された「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」の夜間訪問加算、休日訪問加算、深夜訪問加算は、在宅医療における薬剤師の負担を軽減し、より質の高い医療サービスを提供できるようにするために重要な一歩となるでしょう。
また、患者さんが入院する医療機関と連携して、退院後もスムーズに薬物治療を継続できるように、患者さんの入退院時に薬剤師が介入する「外来服薬支援料2 施設連携加算」も新設されました。
既存の加算項目の点数見直し
2024年度の調剤報酬改定では、既存の加算項目についても点数の見直しが行われました。例えば、患者さんが飲み残しや飲み忘れをしないように、薬剤師さんが患者さんの残薬の状況を確認し、必要に応じて処方医に相談する「重複投薬・相互作用等防止加算」は、30点から20点に引き下げられました。
近年、医療の高度化・専門化が進むにつれて、複数の医療機関を受診する患者さんが増えています。患者さんの中には、複数の診療科を受診しているにもかかわらず、それぞれの医師に、自分が服用している薬を全て伝えていないというケースも少なくありません。
複数の医療機関を受診している患者さんが、自分が服用している薬を全て医師に伝えていない場合、医師は、患者さんの薬の服用状況を把握できないため、重複投与や相互作用のリスクが高まります。
一方、患者さんに特定の薬を安全に使用してもらうために、薬剤師さんが重点的に服薬指導を行う「特定薬剤管理指導加算」は、指導内容に応じて10点または5点算定できるようになりました。これらの見直しは、薬剤師さんの業務負担を軽減し、より質の高いサービスを提供できるようにすることを目的としています。
薬は、正しく使えば病気を治したり、症状を和らげたりすることができます。しかし、使い方を間違えると、逆に健康を害してしまう可能性もあります。そのため、薬剤師は、患者さんに薬を安全かつ効果的に使用していただくために、服薬指導を行っています。
今回の改定で新設された加算項目や、既存の加算項目の点数見直しは、薬剤師がより質の高い服薬指導を提供できる環境を整備し、患者さんの健康を守っていくために重要な一歩となるでしょう。
調剤報酬改定による患者への影響
2024年度の調剤報酬改定は、薬局の経営を安定させ、薬剤師さんの働きがいを向上させるための変更がいくつか行われました。患者さんにとっては、薬局でより質の高いサービスを受けやすくなることが期待されています。
とはいえ、医療制度の変更は、私たち患者にとっても、どこか他人事とは思えない部分がありますよね。薬の値段は変わるのか、サービスの内容はどう変わるのか、薬剤師さんの働き方は変わるのか、患者として気になる点はたくさんあります。
そこで今回は、2024年度の調剤報酬改定が、私たち患者にどのような影響を与えるのかについて、詳しく解説していきます。
患者負担の変化について
2024年度の調剤報酬改定では、薬局の運営費などが評価され、調剤基本料が引き上げられました。一方で、いくつかの加算項目は引き下げられています。これらの変更によって、患者さんの窓口負担が大きく変わる可能性は低いと考えられています。
実際に、今回の改定で、患者さんの窓口負担が大幅に増えるということは、ほとんどありません。しかし、薬局によっては、経営状況を踏まえて、一部の薬局サービスの料金設定を見直す場合があります。
例えば、これまで無料でお薬手帳アプリと連携した服薬管理サービスを提供していた薬局が、有料化するといったケースが考えられます。また、自宅への薬の配達サービスを有料化する薬局も出てくるかもしれません。
窓口負担やサービス内容については、いつも利用している薬局に直接問い合わせてみるのが良いでしょう。
薬局サービスの質向上の期待
今回の調剤報酬改定では、在宅医療や患者さんへのきめ細やかな服薬指導など、質の高い薬局サービスに対する評価が高くなっています。
例えば、自宅で療養している患者さんに対して、薬剤師が自宅を訪問して、お薬の管理や服薬のサポートを行う「在宅患者訪問薬剤管理指導」に対する加算が新設されました。
高齢化社会が進むにつれて、医療の現場では、病院から在宅へと治療の場が移行しつつあります。在宅医療は、患者さんが住み慣れた環境で、安心して治療を受けられるというメリットがある一方、医療従事者にとっては、病院とは異なる難しさがあります。
病院では、医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、多くの医療従事者がチームで連携して患者さんを診ています。しかし、在宅医療では、患者さんの自宅を訪問するのは、医師や看護師、薬剤師など、限られた人数の医療従事者になります。
そのため、在宅医療では、医療従事者一人ひとりの負担が大きくなり、特に、緊急時の対応は大きな課題となっていました。今回の改定で新設された「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」の夜間訪問加算、休日訪問加算、深夜訪問加算は、在宅医療における薬剤師の負担を軽減し、より質の高い医療サービスを提供できるようにするために重要な一歩となるでしょう。
また、患者さんの症状や体質に合わせて、お薬を飲みやすく工夫する「無菌製剤処理加算」の対象範囲も拡大されました。一例として、錠剤を粉砕して飲みやすくしたり、複数の薬を混ぜて一包化したりするなど、患者さんの状況に合わせて薬を調剤することが挙げられます。
これらの改定によって、薬局では、より充実した在宅医療サービスや、患者さん一人ひとりのニーズに合わせた服薬指導を提供することが期待されています。
薬剤師の働き方への影響
2024年度の調剤報酬改定は、薬剤師の働き方にも変化をもたらすと予想されています。特に、在宅医療への対応や患者さんとのコミュニケーションを重視した業務が増えることで、薬剤師の負担が増加する可能性も懸念されています。
薬剤師の仕事は、処方箋に従って薬を調剤するだけではありません。患者さんが安全かつ効果的に薬物治療を受けられるように、服薬指導を行うことも重要な役割です。
例えば、患者さんの体質や体格、肝臓や腎臓の機能などを考慮して、薬の量や飲み合わせを調整したり、副作用のリスクを最小限に抑える方法を検討したりする必要があります。
今回の調剤報酬改定では、このような薬剤師の専門性をより一層発揮できる環境を整備し、患者さん一人ひとりに寄り添ったきめ細やかな服薬指導を提供できるようにすることを目的としています。
その一方で、薬剤師の専門知識やスキルを生かした、より高度な薬学的管理料などが評価されるようになりました。これは、薬剤師がより専門性を高め、患者さんの健康により深く貢献できるようになるチャンスと言えるでしょう。
薬剤師さんの負担が増えないか心配ですが、より質の高いサービスを受けられるようになるのは、患者としては嬉しいですね。
まとめ
2024年度調剤報酬改定は、薬局の経営安定と薬剤師の働きがい向上を目指した変更が中心です。患者への影響としては、窓口負担は大きく変わらないものの、一部薬局サービスの有料化の可能性があります。一方で、在宅医療サービスの充実や患者に寄り添ったきめ細やかな服薬指導など、より質の高い薬局サービスの提供が期待されます。薬剤師の負担増加も懸念されますが、専門性を活かした質の高いサービス提供に向けて、より高度な薬学的管理などが評価されるようになり、患者にとって良い影響をもたらすと考えられます。